トスカーナの丘の上の教会へ

2024年夏に行った、フィレンツェ郊外にある教会のご紹介です。これから夏に向けてイタリア旅行を考えている方は、少し足を延ばして静かな教会で時間を過ごしてみませんか。

教会付近の景色

1500年近く前からある静かな教会

ご紹介するグロピナのサンピエトロ教会は、フィレンツェ(Florence)の玄関口であるサンタマリアノヴェッラ(Firenze Santa Maria Novella)駅から車で約1時間、フィレンツェとアレッツオ(Arezzo)の間、アレッツオ寄りのところにあります。

旧街道からは近かったみたいですが、現在の街道からは遠く離れていて、とても静かな村の中です。セミの声だけがあたりに響きます。フィレンツェに旅行の際は、観光客であふれかえるフィレンツェ市街地から少し離れて静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

サンピエトロ-グロピナ教会の場所

教会入口

教会の入り口には目立つ看板があり、この建物が由緒あるものであることがわかります。看板にはこの教会が12世紀後半から13世紀初頭に建てられたものではあるものの、それよりはるか昔、5世紀ごろの遺跡を修復して作られたものであり、国定史跡であることが書かれていました。

入口近くの説明用看板

教会の中には

入口を入ると、セミの声も聞こえなくなり、さらに静かになります。礼拝用におかれている椅子は現代のものですが、座らせてもらって静かな時間を過ごすのもよいかもしれません。

教会自体はそれほど大きくはありませんが、太い柱がずらりと並び、荘厳な雰囲気を醸し出しています。また、壁が石造りのためか空気も少しひんやりしています。そして、屋根は木造となっていて、これは組積式構造というものの1種のようですが、石の壁とそこから降りる柱で屋根を支えているようです。この造りでは壁はそれだけで自立するのはもちろんですが、屋根の重さを支えることができるほど厚く頑丈になっていて、火災への対策にもなります。建物内部は壁ではなく柱にして、広くフロアを使えるようにしていますが、アーチの下から見ると、壁の厚みがよりわかります。
また、梁が壁を突き抜けて通されており、壁にしっかり重さを伝えると同時に、建物全体の強度もあげていることがわかります。

教会内部

壁や柱に彫られたモチーフ

内部の壁や装飾を見ていくと、壁には十字軍のマークも彫られていました。特に何も説明もなかったのですが、たまたま建築時に持ってきた石に彫られていたのか… フィレンツェは十字軍の遠征の主要ルートではありませんでしたが、十字軍が起こったことにより交易が盛んになったことで街が発展したとも言われていますので、実は何か関係があるのでしょうか。

壁に刻まれた十字軍のマーク

各柱には様々な動物や空想上の生き物が彫られています。中にはこの教会、よく壊されなかったな、と思わせる彫り物もあります。

教会にいたらあかんやつ

カトリックの本場の教会なので、教会内部の装飾物に聖人や天使、人間以外が存在していてはいけないはずですが、キリスト教が教義の体系を整える前から教会が存在していて、その施設をそのまま活用したものと思われます。今ならSDGsとも言えますが、貧しかったからなのか、それとも他に理由があったのか・・・しかし、異端の教会として壊されることなく、今日まで残されています。

さらに柱や壁に彫られたものを見ていくと、他にもさまざまなモチーフがみつかります。

ちょっと愛らしい。鳥・・・?
鳥の進化系・・・?
このマークは…⁉

因みにスターバックスさんも同じくセイレーン(サイレン)をモチーフにしているとのことでしたが、魅了や航海を意図しているそうですので、この教会とは直接的な関係はなさそうです。ですが、1000年近く前からある教会の中でなじみのあるモチーフを見つけると、なんだか親近感がわいてきます。

マイナビのサイトより引用しました。

祭壇の謎

教会右手中央には、なんだか存在感を放つ祭壇のようなものがあります。この中心には鳥、その下にはスフィンクスっぽい猫が彫られています。聖人もおらず、動物だけがある祭壇

柱に置かれた祭壇のようなもの。セイレーンもここに彫られている。

よく見ると、この祭壇のようなもの、後ろの柱とは色や質感が異なっています。

祭壇と柱

祭壇はやや黄色く、石もやや脆そうに見えますが、後ろの柱や壁はもっと青っぽく素材も堅そうに見えます。

教会前方

写真ではわかりにくいのですが、前方祭壇のところは石の削りが荒く、後方のフロア部分と明らかに材質が違います。祭壇部分の材質は柱のところに置かれている祭壇のようなものとよく似た材質になっており、祭壇部分のほうが明らかに古そうに見えます。これはもともとあった教会を増築して、カトリックの教会として整えなおしたものと思われます。しかし、カトリックの教会として作り直したのなら、なぜ異端ととらえかねない祭壇をわざわざ横に移し残しておいたのか、こっちはこっちで何かお祀りしたいものがあったのか・・・

教会入口の看板には12ー3世紀に整えられたとあるので、この時は間違いなく西方教会系(カトリック)の教会と考えられますが、元の遺跡は5世紀ごろのものとのことなので、そうすると東方教会系の分裂が始まった時期ではあります。すると、もともとやはりキリスト教の教会だったので、やっぱり古いものも残しておこうとなったのでしょうか。

壮大な歴史ではないけれど

絶対に後付けなはずなのですが、アーチの下にぶら下がる電球、こちらも歴史とは全く別の理由で気になります。これ、配線はどうしたんでしょう。100年以上前なら篝を焚いていたでしょうが、今は吊り下げ電球です。しかし、壁を伝う配線は見当たりません。きっとこの電球がついたのは、ここ数年の話ではなく数10年前で、そうすると長寿命の電池式の電球などもなかったでしょうし、電線を通すのに壁の中をくりぬいたのでしょうか。にしては壁に目立った傷らしきものはありません。教会の人はおらず、そもそもイタリア語もわからないので、この謎は解けず、そのまま教会をあとにしたのでした…

電球の付近に石を削ったような跡は見えない

グロピナのサンピエトロ教会への行き方

レンタカーで往復する

今回の旅で私たちは現地在住の知人に連れて行ってもらいましたが、最も手軽なのはレンタカーです。フィレンツェは大きな街なので、他にもたくさんのレンタカーの営業所がありますが、英語対応もできそうな大手では、サンタマリアノヴェッラ駅付近にHertzレンタカーがあり、サンタマリアノヴェッラ駅から西に徒歩8分のところにEurocar、サンタマリアノヴェッラ駅から南に徒歩10分のところにAvisの営業所があります。

フィレンツェ中心部のレンタカー営業所

後から調べてみたところ、下記のように公共交通機関でも行くことはできそうですが、本数はかなり限られているようなで、また、下記は2024年の情報ですので、ご自身でもしっかり調べてから利用してください。

往路を公共交通機関で行く場合

フィレンツェの中央駅である、サンタマリアノヴェッラ駅からTrenitalia(トレニタリア、日本でいうところのJR)のRVまたはREG(各駅停車)に30分ほど乗り、バスに乗り換えて25分、さらに徒歩で25分かかります。

バスを降りてからの道は一応アスファルトで舗装はされていますが、歩道はなく、車もすれ違えなさそうな細い田舎道です。夏場だと雨が降ることはまずありませんが、徒歩の25分は灼熱です。帽子や日傘でしっかり日よけをして歩いてください。ただ、全然知らない海外の道をずっと歩くのは怖い、と思われる方もいるかもしれませんが、人がほとんどいないため、すりなど治安面はそこまで気にしなくても大丈夫そう(個人の主観)です。

ルート1

または
 

ルート2

復路を公共交通機関で戻る場合

ルート1

または

ルート2

飲み物・食べ物は持っていこう

教会付近には飲食店も売店も一切ないので、途中の飲み物などは自分で持っていきましょう。ごはんは途中座って食べられるようなところもありません。教会の中で食べるわけにもいかないので、食べるなら電車の中ですかね・・・。また、観光客の嗜みとして、ごみは自分で持って帰りましょう。

ちなみに教会を出てすぐ左側の前方に、井戸水(?)が飲めるところがありましたが、さすが連日40℃前後の夏のトスカーナ、熱湯風呂を超えるお湯が出てきました。

訪問するときは、上記十分に気を付けてくださいね。

夏のトスカーナは毎日が晴天

周辺情報

地元のジェラート屋さん(車限定)

夏のトスカーナはとにかく日差しが強い!気温も40℃越えで屋外はうだるような暑さです。教会までの道のりもとっても暑いので、車があれば、ぜひジェラートを。ご紹介するのは、Carabeというジェラート屋さんです。

フィレンツェから南東方向の幹線道路A1を南下し、サンタマリア(Santa Maria)またはサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノ(San Giovanni Valdarno)という町まで来たらSP7号線を東に進みます。サンタマリアからは車で5分弱、サン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノからは車で6ー7分のところです。

ジェラート屋の場所(Googleマップより)
Carabeの場所(拡大)
のどかな一本道に前方に小さく看板が見える(ストリートビューより)
入口と看板(ストリートビューより)

案看板の横の門(閉まっていたらお休み中です)から中に入り、丘を上がっていくと、かわいらしいお店があります。

正面から中に入り、ジェラートを注文しましょう。のどが渇く場合は飲み物もオーダーできます。注文後はお店の右手にある見晴らしの良い屋根付きの席でゆっくり休憩ができます。

店舗入口
ナッツのジェラート

ミルクベースのジェラートはあっさりしつこくなく、でもコクがあります。

実はこのお店、フィレンツェの市内にも店舗があり、Tripadviserではフィレンツェのレストラン284店舗中30位(2025年現在)というかなりの人気店です。遠くてここまで来れない、という方はフィレンツェ市内のお店でお楽しみください。

Gelateria Carabeフィレンツェ郊外の店舗情報、フィレンツェ市内の店舗情報

ダヴィンチと同じ景色をみてみよう

ジェラート店のすぐ近く、車で5分とかからない場所にLe balze dell'acqua zolfinaという公園エリアがあります。ここには切り立った岩場があり、モナリザの背景と言われています。広がる景色と切り立った岩場のコントラストも素晴らしいですが、500年以上前の人物であるレオナルド ダ ヴィンチと同じ景色がみれるのは、感慨深いものがあります。

Le balze dell'acqua zolfina
モナリザ(AIで作成)

なお、モナリザの絵はいくつか存在すると言われていますが、最も有名な絵は現在ルーブル美術館の所蔵となっており、その絵を見るには大変な人だかりを縫っていかねばなりません。フィレンツェやイタリアの美術館では見ることができませんのでご注意ください。

Le balze dell'acqua zolfina : https://www.lamiabellatoscana.it/