マネジメントの実践例

これを書いている今は2026年ですが、10年以上前に比べると、残業規制やテレワークや育休の積極導入、"仕事を重視しない価値観" "何でも企業や政治のせいという思考"の浸透等により労働時間は激減しているように思います。他国企業に対する競争力低下の理由を労働時間低下に求める気はありませんが、素振りの回数が減っている事は事実でしょう。だからといって、がんばる時間が減っているのだから一昔前の人達を追い越したり同じ水準に達するのは無理だと管理職層であるあなたが嘆いているとするとそれは問題です。スポーツの世界記録が塗り替えられ続けていることや難易度の高い技の競技者が増えていることは、より洗練された方法があれば従来より少ないトレーニングでも能力向上が可能であることを示しています。おそらく、かつてのような残業しまくりの環境に戻ることは無いでしょう。効果的なトレーニングとマネジメントで高い生産性を生み出すマネジメントが求められているのです。


フォーカス
そもそも、経営層が儲かる事業・ビジネスを選べていないという残念なトップマネジメントに振り回されている企業の現場については、申し訳ないけれども、ここでは触れません。
それなりに売り上げがあるが、最近停滞ている、そのような現場のマネジメントの改善にフォーカスします。

現場のマネジメントの改善
みなさんの職場はどうかわかりませんが、筆者の現場では、日本企業の問題点として指摘されている「仕事はやりながら覚える、背中を見て育つ」式の手抜きのほったらかし主義が目立ちます。一方、欧米の企業の場合は、体系的なトレーニングと職務記述書(JD)に基づく教育が行われます。そして教育を受ける側の意識も違います。欧米では、学びの主体は個人であり、自身の市場価値を高めるために自ら学ぶとされます。そんな話をすると、若手や部下が受け身で主体性が無いからいくら教育をがんばったところで。。というベテラン勢の嘆きが聞こえてきます。伸びるやつは放っておいても伸びると。確かに、いくら手間暇かけて教育しても響かない人達は一定数います。ここで取り上げたいのは、放っておいても伸びる人と、普通の人です。それらの成長を加速させること・組織の能力を上げることです。現状、あまりにも最初の手間・そして日々の意味のある手間を惜しんで、あとで嘆いているので、もうちょっとだけ手間をかけようぜという提案になります。

「考えさせる」を言い訳にして、最初の手間を惜しみ、進捗管理の場になって、「どうなってんだ!」と憤慨していませんか。そのような管理職が多いように思います。現場が炎上してから介入して事態を収拾し、「やっぱりオレが必要だな」と悦には入る。上層部からなんとなく優秀に見える。未然に防いだトラブルは目立ちませんが、起きてしまった大問題を不眠不休で解決(リカバリー)したマネージャーは「あいつは頼りになる」と社内で英雄視されがちです。これが「未然防止」のインセンティブを削いでいるのでしょうか。また、若手の頃はそういう苦労するもんやと決めつけ、業務プロセスや仕組みをアップデートしない管理職。手間を惜しみすぎなのです。 おぉーっと。興奮して話がそれ、拡大しそうです。 話を元に戻して簡単にできるひと手間3つを紹介します。

1.困り事と解決状況の一覧表作成 :問題への感度を高めて組織風土改善
2.構想一覧表作成(開発の現場であれば、構想設計一覧):最初に手間をかけることで後工程を楽にする
3.ややこしいおっさんとの問答 :考える力や折れない心の養成、教える側の意識改革

1.困り事と解決状況の一覧表作成
職場が開発現場であれば、開発現場の技術者に困り事を書いてもらうのです。
・自分が設計業務を進める上での困り事
・自身が設計した商品に関する製造部門での困り事
・自身が設計した商品に関するサービス部門での困り事
・自身が設計した商品に関する顧客の困り事
などです。それを一覧表にし、開発現場の技術者全員が参照できるようにします。開発現場には若手技術者から、先輩、ベテラン、管理職槽の技術者まで含まれます。
この狙いは、部下や後輩が抱える困り事を拾いに行く管理職層の育成、顧客の抱える困り事や自社のバリューチェンに存在する困り事への関心を高めて、価値創造やコストダウンを考える機会を増やし、問題解決能力を高めることです。
みなさんの職場のマネジメント層は、自分から部下が困っていることが無いか拾いに行っているでしょうか。管理コストを管理される側に負わせてはいないでしょうか。
みなさんの現場は、「何に取り組めば良いかわからない」などとモヤモヤしている人はいませんか。職場が認識している困り事と解決状況を可視化することは問題への感度を高める第一歩です。

「困り事」の4つのカテゴリー
4つのカテゴリーはそれぞれ視点が異なります。
・設計業務の困り事:
 プロセスやリソース、ツールの問題です。先輩や管理職層がこれに気づかない、気づいても放置するのは問題です。
・製造部門の困り事:
 作りやすさの課題です。作りにくいものは商品の原価を押し上げます。設計部門がここへの関心が弱いのは改善しなければなりません。
・サービス部門の困り事:
  直しやすさ・維持しやすさ・交換しやすさの課題です。人件費や出張費の嵩むサービスコストを抑制するか、商品・サービスのダウンタイムをゼロに近づけるかは、企業が利益を出し続けるための重要な課題です。
・顧客の困り事:
  真のニーズ・使い勝手の課題がそこに眠っています。自社製品の要改善点に気づき、異なる専門家の目に触れるようにし集団で解決策を考えます。顧客の困り事解決こそが、顧客が商品やサービスを買う理由です。ここへの追求が重要なのは言うまでもありません。

このアイデアがもたらす「3つの教育的効果」
「待ち」から「拾いに行く」マネジメントへの脱却:
一覧表があることで、管理職は部下が何に詰まっているかを一目で把握できます。問題のある業務プロセスがあるなら改善に動かなければなりません。トラブルが起きてから報告を待つのではなく、表を見て「この製造の困り事、次の設計変更で解決しようか」と、上流工程で手を打つ「攻めのマネジメント」を訓練できます。
技術者の「全体最適」視点の醸成:
若手技術者は自分の図面ばかりを見がちですが、製造やサービスの困り事を知ることで、「自分の1本の線が、現場の1時間の苦労を生んでいる」という事実に気づけます。これがコストダウンや品質向上への強い動機付けになります。
暗黙知の形式知化(ベテランから若手へ):
ベテランが「かつてこんな困り事があった」と書き込むことで、過去の失敗を教訓として共有できます。「過去の不具合事例」は最高の教材です。

共有による効果
部下と上司間、一つのチーム内だけでこの一覧を使うのはもったいないです。同じ専門集団で共有する、他のプロジェクトとも共有する、関連部門と共有することで、実は解決策が他にあることに気づくこともあるでしょう。あるいは、連携して取りかかるのが効率が良いテーマもあるかもしれません。そのような良い方向の力が働きます。

運用を形骸化させないためのコツ
「書け」と言うだけでは書きません。狙いを示すとともに、例を書いてあげましょう。例の書きっぷり、先輩の書きっぷりがしょうもないと、それに続く記述も質が悪くなります。
それから、「心理的安全」の確保も必要です。「困り事を書く=能力が低い」と見なされないよう、管理職が自ら自分の失敗や困り事を最初に書き込むことが重要です。
解決のプロセスの可視化: 書き込まれた困り事に対して、誰がどう動いたか、あるいは「今回はあえて対応しない(優先順位)」という判断もセットで記録します。
定期的な「困り事棚卸し会議」: 月に1回程度、この表を見ながら「今、組織として最優先で解決すべき上流の課題は何か」を議論する場を設けます。


      2.構想一覧表作成(開発の現場であれば、構想設計一覧)
      各テーマ目標(何かの性能向上、機能開発、大幅なコストダウン、仕様策定 なんでも)について、どのような手段(自社の設計資産の流用・応用、委託開発、自前に技術獲得、、、、)で、どのような検証・評価を経て、いつまでに、どんなステップ(試作は何回?、市場で評価するかどうか?)で、仕上げていくのか、実現するのか構想していることを書いてもらいます。明確で無いことが多くて書けないところもあるでしょう。そういったことも書いてもらうのです。部下がどんな構想をしているのか記述してもらい、それをレビューするのです。想定が甘いところが見えてくるかもしれません。現在の力量が具体的に見えてきます。アドバイスできることがあるでしょう。それにより、「最初に」上司がしっかり部下を指導し伴走の準備を整えます。

      この取り組みの最大の価値: 「不確実性」の可視化
      「明確でないところも書いてもらう」という点が、実は最も重要です。
      従来の報告: 「いつまでに終わります(願望)」という結果だけを報告しがち。
      この案: 「ここは自社技術でいけるが、この検証方法はまだ確立できていない(リスク)」というプロセスの不確実性をさらけ出す。これにより、上司は「あ、ここの検証で詰まりそうだな」と事前に予見し、リソースの追加投入や外部専門家の起用を「事件が起きる前」に判断できるようになります。

      実践のための「構想シート」の構成案
      部下が書きやすいように、以下のような項目を提示すると、現在の力量がより鮮明に見えてきます。

      項目記述してもらう内容(例)上司がチェックするポイント
      実現手段流用か、新規開発か、委託か?「安易な流用」で潜むリスクを見逃していないか?
      検証の妥当性どんな試験で「合格」とするか?検証方法は妥当? そもそも仕様は適切(十分か、オーバースペックでなないか)
      不透明な要素現時点で「わからないこと」は何か?ここが技術者の「誠実さ」と「リスク感度」の差。
      リカバリー策試作1回目が失敗したらどうするか?プランB(代替案)を持っているか?


      「力量」を見極めるためのレビューのコツ
      このシートを前にしたとき、上司は「正解を教える」のではなく、「問いを立てる」ことで部下を育成できます。「このステップで失敗したとしたら、原因は何だと思う?」「市場評価で『使いにくい』と言われた場合、設計のどこまで戻る必要がある?」「今の記述で、納得させられるエビデンスになるかな?」
      このように「最悪のシナリオ」を上流で一緒にシミュレーションすることが、理想的な「伴走」の形ではないでしょうか。注意が必要なのは、部下が「完璧な構想を書かなければ怒られる」と萎縮してしまうことです。「わからないことを『わからない』と早く言える奴が、一番仕事ができる」というメッセージを、管理職層から発信し続けることがセットで必要になりますね。

      3.ややこしいおっさんとの問答
      これは最近は、おっさん側が避けているのではないでしょうか。タイパだコスパだという主張の記事を見て若手と議論することに腰が引けているかもしれません。引き連れて飲みに行くのも遠慮がち。生成AIが豊富な情報量と無敵に論理武装を背景にきわめて適切な問答が可能となっている中、なぜ、ややこしいおっさんと話ししなければならないのか。きっとそう思っているに違いない。そう考えたおっさんは若手との問答を避けているかもしれませんね。タイパやハラスメントへの過度な懸念が、この貴重な「知の摩擦」を奪っています。
      この状況を打破し、「令和版・健全な技術的問答」を復活させることを提案します。
      改めて問答の機会を設けようということではありません。仕事を通じて(OJT)専門性を高めてもらうことはやっていると思いますが、そのときに関係性・問答の密度を上げようという話です。静かな退職者を除いて、若手の大半は自分の専門性を高めたいとうニーズを持っています。もっと時間を取り技術的アプローチについて問答すべきなのです。その準備に入りましょう。

      ベテランの「腰引け」を解消する仕組み作り
      ベテラン側も、実は「教えたい」「役に立ちたい」という承認欲求を持っています。ただ、若手の「タイパ重視」な空気に気圧されているだけです。
      「問答」を業務プロセスに組み込む:
      「飲み会」ではなく、前述の「構想シートのレビュー」を公式な「問答の場」として定義します。これにより、ベテランは「説教」ではなく「仕事としてのレビュー」という大義名分を得られます。

      「師匠」としてのロールを再定義:
      自分の役割は、若手の構想にときには「意地悪な質問を投げて、設計の脇の甘さを気づかせることだ」と定義します。
      自分の役割は、自分を上回る人をいかに作れるか、増やせるかにあると定義します。

      「問答の密度」を上げるための対話術
      若手が求める「専門性の向上」というニーズに火をつけるには、以下のような問いかけが良いです。
      「Why」の深掘り: 「なぜそのパラメータにした?」「なぜその材質を選んだ?」と3回繰り返す。
      「What if(もし〜なら)」の提示: 「もし製造工程で0.1mmズレたらどうなる?」「もし10年後にこの部品が廃番になったら?」という想像力を問う。

      ややこしいおっさんは、AIを上回るところがあるのか
      平均的な正解では無い、その仕事を通じたベストな解をオーダーメイドで提供できます。固有の失敗談、経験をその聞き手が理解できるように伝える事が可能なはずです。

      最後に
      あなたの職場には、自分をアップデートしたい部下がいるはずです。そのアップデートを支援できるのは上長の大切な役割です。部下との伴走を通じてあなたもアップデートするはずです。
      あなたが10年かかって到達した水準に、部下が10年経っても到達しない、あるいは10年ちょうどで到達するとしたら、進歩が無い気がしませんか。あなたが10年かかって到達した水準に4~5年で到達できる仕組みを整え伴走できたら、どうでしょう。残り4~5年かけて、ものすごく進歩しますね。これが組織や集団の成長の原理の一つだと思います。私たちは先人の知恵の蓄積のおかげで更に進化させることができているのです。後輩と伴走し一人前にする責任が僕たちにはあります。

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