新入社員のみなさん。研修が終わり、配属や歓迎会は終わったでしょうか。大きな環境変化があったわけですが、そろそろ落ち着いて来た頃ですかね。しかし、一方で、アイデアと行動力で起業するのではなく、どこかしらの組織に所属して1年生から社会人をスタートする事を選んだ場合、その組織序列の最後尾にいるんだという事にストレスを感じ始めている頃かもしれません。なにせ、現時点ではその組織の事業拡大や収益性・生産性向上に何の役にも立たないのですから、そのような状況をストレスに感じるのは当然ですよね。 あるいは今就活中だけれども、同じようなストレスを感じてる人もいるでしょう。ここでは、そのストレスを軽減し、自己満足度を高めるために、どうしようかという話、巨人の肩の上に登ろうぜという話をしようと思います。

偉人ほど自身の現状について謙虚

”巨人の肩の上”という言葉は、アイザック・ニュートンの「私が彼方を見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです」という、友人に宛てた手紙のこの一節を通して知られています。 ”巨人の肩の上”という言葉の原典は別にあるらしいのですが。 それはともかく今の解釈では、偉大な先人達の業績や研究を巨人にたとえて、今の新しい知見や考え、学術的成果はそれらの上に発見され、そして積み重ねられているのだということを指しています。世界的な音楽家・坂本龍一は、Webメディア OPENERS において、「オリジナリティ・学問」について、こう述べています。「作曲の95%は、過去の遺産を糧にしています。作曲家自身の“発明”は、せいぜい1、2%程度で、最大でも5%といったところ。作曲の大部分は過去の作品の引用です。だから、音楽に関する知識がなかったら、作曲なんかできるはずがない。」 このように多大な業績を残した人でさえ、環境や他者の功績に感謝があり、自分の現状や成果に謙虚であることに、更に頭が下がります。

周りは他人の業績だらけ

よくよく考えてみると、何気なく歩いてる道路も、利用する電車や飛行機や船も、着ている服も、住んでる建物も、毎日利用するネットデバイスも、遙か遠くにいるはずのマグロも、美味しいお米やお酒も、もしゼロから自力で何とかしようとしてもできるはずが無いことに気づきます。今作ってるよという人がいるかもしれませんが、それが可能なのは先人の業績や、情報やモノのバリューチェーンのおかげです。今手に持っているペットボトルかコーヒーカップだって、だいたいどうやって作るのかも知らなければ、原料はどこからどのように取ってくるのかもわかりません。それがタダみたいな値段と労力で手に入るわけですが、どこかの他人の努力と工夫の蓄積がそれを実現しています。そんなこと言われなくともわかっているけれど、時々、これってどうやって作り出しているのか、調べて感嘆する機会を設けるようにしたいですね。消費するより生産する側に立つこと、生産者になれることが我々の人生の満足度を高めるからです。生産者になるにはどうすれば良いか。生産者になるには先人や周囲の生産者から学ぶ必要があります。 

巨人の肩に楽ちんに上がれるエレベータがあると信じている

就職活動において”自分が成長できそうか”を重視している人の中には、業務上必要な基礎知識・専門知識がすぐに身につけられる研修システムがあって、そこに座っていればものすごい早さでイケてる社会人になることができる、据え膳上げ膳なエレベーターがある、あって欲しいと願っている人がいます。それが無さそうだと内定辞退したり、入社してもすぐやめたりします。毎年見かけますね。本を買っただけでは、研修を受けただけでは、何も身に付かないのは経験上知っているにもかかわらず、短期間で楽ちんにスペシャルな経験が自分の頭にインストールされる仕組みがあることを望むのです。そんなものは無いのでとっとと諦めて、学びをエンタメと捉えて楽しめるマインドに切り替えるのが得策です。いくら料理本を読んだり、料理の動画を見たり、食材と機材を用意したところで、それだけではあなたが美味しい料理を作れないのと同じです。カーブやフォークボールの投げ方の動画を見ても、それだけでできるようにならないのと同じです。 科学的で洗練されたトレーニングメソッドがあればそれは可能だし、組織はそれを用意すべき? 日本の(多くの他国もそうですが)教育制度には100年を越える歴史があり、教科書や教育メソッドがありながらあれほどの学力差がつくのはなぜでしょうか。ネット技術や教育者・先行者の理念のおかげでタダまたは格安でいろんなコンテンツが学べる環境にあるのに専門性を身につけた人がウジャウジャ増えた実感が無いのはなぜでしょうか。欲しい知見が簡単にインストールされる仕組みはまだ発明されていないのです。ここは自分でどうにかしないといけません。腕を上げるための学び、新しい考え方を理解・習得できるまでのプロセスを楽しいと感じることができたら、充実した日を送りやすくなります。巨人の肩に上がれるエスカレーターやエレベーター を探すより、自分のマインドを見直しましょう。学びがエンタメと感じるなんて一生モノのスキルです。

とはいえ、本なんかちっとも読まない先輩だらけの愚痴のサロンと化した職場とかに当たると嫌ですよね。自分もその常識に染まり、学ぶ気など吹き飛びそうです。面接でそのアタリ・ハズレを見極めるのは難しいですし、同じ会社内でも職場ごとに風土は違いますから、気休め的ではあるのですが、面接時に、面接官達が最近身につけたことや新しく取り組んでいることは何か聞いてみましょう。最近うれしいと思ったことが何か聞いてみて、その中に自己の能力アップや誰かに貢献した経験などに関することがあるかどうかに注目してみましょう。人を面接してやろうとしている立場の人達から、普段勉強している感じがしないのであれば、その組織はハズレの可能性が高いです。

今のあなたは大したことないえれど、巨人になれるかもしれない

あなたは(多くの人が)、しょせん今までに得られた知見や経験に基づいて価値観を形成し、判断しているに過ぎません。自分の判断は、とても浅い判断かもしれないということを念頭に置いておきましょう。さて、配属されてみて暫く経ったけれど、まだスイッチが入っている気がしない。その原因は、思い描いた仕事じゃないから、周りに憧れるようなキラキラしている(ように見える)先輩や上司がいないからと考えているかもしれません。しかし、あなたが大したことないと思っている周囲の先輩や上司は、あなたに比べたら十分巨人です。あなたにもし謙虚に学ぶ気持ちがあり、誠実であるならば、周囲の先輩は自分が何年もかけて習得したことを短い時間であなたが習得できるよう導いてくれるでしょう。あなたは効率よく経験を積むことができ、浮いた時間で生み出した新しい成果をその組織や社会にもたらすかもしれません。そうなればあなたは後輩や新人に同じように導けば良いのです。この連鎖が社会や組織の進歩の原理です。一方、あなたの態度が悪い場合、何にも得るもの無く日々過ぎるでしょう。あからさまにリスペクトの無い様子を表現しているあなたに、いくら仕事だとはいえ何かを教えようという気にはならないからです。そりゃぁそうでしょう、人間だもの。

巨人いないかも

いや、どうしても、ここには自分にとっての巨人いなかったよ、選択ミスだった! という場合は、数ヶ月間間、”ココだからこそ手に入りやすい事が無いか” ”おいしいものあるのに気づかずに去ろうとしていないか”探した上で、やっぱり無いわ!ということであれば、とっととそこを去りましょう。 ただ、情報網が脆弱で視野も狭いので、あなたの判断は間違っている可能性が高いのですが、時間は有限ですし、さっさと次へトライするのも良いでしょう。色々寄り道しながらあれこれつまみ食いするのは、効率は悪いかもしれませんが、長い時間軸で見ればあなたの引き出しを増やすのに役立つでしょう。”家族だ”なんだと責任が増えていく前は、それもOKでしょう。

効率を追求するより、没頭を繰り返す事のほうが大事

”コスパがどうだ”とか言って、極端に効率を気にし、無駄になりそうなことを毛嫌いしていませんか。確かに学びたいことがあるとき、それを身につけるためのロードマップがあって、聞きたいときにいつでも近くに聞ける先輩がいて、そんな状態で学ぶことができたら良いだろうなと思う気持ちはわかります。余計な穴にはまりたくないのもわかります。しかし、そのことにばかり気を取られているより、とっとと始めて、ご飯食べるの忘れるくらい没頭して、調べて、考えて、何か生産(書いてまとめる、制作する)しながら、知識や考え方を得ていく事に集中しましょう。遠回りや寄り道しても、それは無駄にはならないです。自分で腹落ちして自分の言葉で脳みそに焼き付けるには、試行錯誤と没頭することが大事です。理解できたときの感動や気持ち良さは、試行錯誤と没頭していればこそ得られる感覚です。試験に合格することが目的ではなくて、その分野に詳しくなることが目的ならば、コスパはいったん脇に置きましょう。

経験は価値そのもの。

そうやって、試行錯誤しながら没頭していくことを繰り返すうちに、自分の引き出しが増えるとともに、新しいことを理解する能力が高まります。巨人を自分で登っていくうちに専門性や問題解決能力が高まります。あなたも戦力になり、頼られる存在になっていくことでしょう。コスパはいったん脇に置いて、それを食べましょう。(あぁ、やり甲斐搾取の詐欺にだまされないように)

近道があるかもという視点も大事

これまでと逆のことを言います。 コツはコツコツやった人に舞い降りるノウハウですし、本当に無駄かどうかはとことんやってみないと分からないというは正しいと思います。その一方で、思い込みを排除するためにも、近道が無いか、全く他の方法が無いか、ずるいように見える方法でも何でも良いので、楽ちんな方法が無いか考える癖も持つようにしましょう。 

あなたは巨人になる

想像してみてください。学びをエンタメだと感じるマインドがあり、基礎体力もメキメキ身につけている、それでいて、目標達成にための近道を見つける鼻がある、そんな風になったら、みんなが頼りにする巨人に近づいているってことです。巨人の足下にいた、そんなあなたが、いつしか、巨人になるかもしれないのです。